血管年齢検査などで動脈硬化の可能性を指摘されて、少し落ち込んだことはありませんか？

ほかにも、冬になって血圧が上がったことが気になって調べるなかで「動脈硬化」の言葉を目にして気になっている方もいるかもしれません。昨冬に高血圧についてとりあげたブログ記事でも少しだけご紹介しています。

＜参考記事＞

高血圧 になるとどうなる？｜寒い冬 に血圧が上がる理由について

今回は、動脈硬化を「何とかしたい」と感じている方に、今から始められる日常生活の工夫について解説します。

■動脈硬化の概要（おさらい）

動脈硬化とは、動脈が硬くなって弾力性が失われた状態です¹。動脈硬化への影響因子は、高血圧、加齢、喫煙、脂質異常症、飲酒、糖尿病などがあります¹。

動脈硬化そのものは、日常生活で目立った症状がないことが特徴です。

詳しくは前回の記事をご覧ください。

＜参考記事＞

よく聞く「動脈硬化」とはどんな病気？　原因・症状を知って早期発見につなげよう

■動脈硬化は治るの？

では、動脈硬化は治るのでしょうか？

残念ながら、一度動脈硬化になってしまった血管を完全に元の状態に戻すことは難しいです。しかし、工夫次第で現在の状態を維持できるかもしれません。

従来、動脈硬化の病態は、慢性的に進行すると考えられていました。

しかし近年、血中脂質が正常、あるいはそれ以下のレベルまで改善されると、動脈硬化の進行が抑制されるといったケースが報告されています。

血中脂質を低下させると、動脈硬化となってしまった部分の悪化が抑制され、動脈硬化に関連する病変を小さくさせる可能性があります。

血管内皮細胞の修復能の改善、プラーク内の泡沫細胞におけるコレステロール逆転送（reverse cholesterol transport）の促進、さらにマクロファージによる壊死核の貪食・除去能力の強化などが挙げられています²。

つまり、LDL（悪玉）コレステロールなどの血中脂質を正常もしくは正常以下にすると、一度動脈硬化に至ってしまった血管の状態をやや改善させ、その進行を抑えられるかもしれません。

動脈硬化そのものを「なかったことにする」ことはできません。しかし、改善の余地はあるので、治らないものだと諦めてしまうにはもったいないかもしれません。

■今からできる | 動脈硬化の予防と改善習慣

動脈硬化の予防と、その改善習慣を日常生活に取り込むことで、実年齢より若い血管年齢や、動脈硬化の影響をうける疾患の改善につながる可能性があります。

◎動脈硬化の予防習慣

まずは食事と運動の習慣を取り入れましょう。

魚が好きな方は、特に青魚を中心とした食事を選ぶとよいでしょう。魚の油に含まれる成分（EPA）には動脈硬化の進行を抑える作用が知られています。

一方で、肉類や乳製品に多く含まれる飽和脂肪酸は動脈硬化を悪化させてしまう懸念があります。肉が好きな方も、まずは「数回に1回でも魚を選ぶ」ことから習慣につなげていきましょう。

運動の習慣がある方はぜひ継続しましょう。

1日合計30分以上を週3回以上（可能であれば毎日）、または週に150分以上の中強度以上の有酸素運動を実施することは血清脂質の改善に有効であるとして推奨されています³。

そして、喫煙習慣がある場合は、禁煙も大切な予防習慣です。禁煙による影響は早い段階で現れ、高齢者を含め禁煙期間が長くなるほど動脈硬化のリスクが低下するといわれています³。

いずれも今からできる習慣なので、取り組んでみましょう。

◎動脈硬化の改善習慣

すでに動脈硬化を指摘され、脂質異常症に関する薬を処方されている場合は、血液検査の結果に関わらず脂質異常症関連の内服薬は続けたほうがよいでしょう。

それ以外の習慣に関しては、基本的に予防習慣と同様の内容に取り組むことが勧められます。

■まとめ

動脈硬化は、日々の生活習慣によって予防や進行抑制が可能な病態です。すでに動脈硬化がある場合でも、血液検査などでリスクを評価しながら、内服薬の調整や生活習慣の見直しをすることで、良好な血管状態の維持につながります。

動脈硬化で気になることがあれば、ぜひ当院へご相談ください。みなさま一人ひとりの「こうでありたい身体」を目指せるよう、応援します。

＜参考文献＞

1, 厚生労働省．e-ヘルスネット　動脈硬化.

2, Jianshu Song et al. Mechanistic insights into the regression of atherosclerotic plaques. Front. Physiol.2024;19:1-15.

3, 日本動脈硬化学会.動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版.