日常生活のなかで「糖尿病」の言葉を耳にする機会はありませんか。
脳梗塞や心筋梗塞、腎不全で人工透析が必要な状態になってしまうなど、糖尿病が関係するさまざまな病気についてご存じの方も多いでしょう。
しかしそれらに比べると、糖尿病そのものの症状や初期症状については、知られていないかもしれません。
今回は意外に知らない糖尿病について、原因や初期症状を中心に解説します。
■糖尿病とは
糖尿病とは、膵臓から分泌されるホルモンであるインスリンが十分に働かないために、血液中のブドウ糖(血糖)が増えてしまう病態です。
この病態になってしまうと、食べ物の消化によって血液に入ったブドウ糖は、身体にとって必要なエネルギーへと変換されにくくなってしまいます。
また、血糖値が正常値より高い状態が続くと、血液中に活性酸素が増えることで血管内皮が障害を受ける1、白血球などの免疫に関わる細胞の機能が低下するなど、身体にさまざまな悪影響が出やすくなってしまいます。
糖尿病には、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病の大きく3つのタイプがあります。
一般的に「糖尿病」と呼んでいるのは2型糖尿病で日本人の糖尿病の約95%を占めています2。
■糖尿病の症状とは
では、このような病態によってどのような症状が出るのでしょうか。
身体にとって必要なエネルギーが不足してしまうと、疲れやすくなってしまいます。また、身体が糖以外からエネルギーを作ろうとするため、筋肉や脂肪が分解されてしまい、体重減少がみられます。
また、血糖値が160~180mg/dL程度の高い状態が続くと3、血糖が尿にあふれ出てしまいます。尿に出た糖分は利尿作用を持つため(浸透圧利尿)、頻尿・多尿・口渇感などの症状がみられるようになります。
さらに、血糖値が300mg/dLを超えると意識障害がみられることもあります4。
血糖値の高い状態が数ヶ月以上続くと、眼や腎臓や手足の先端などの細い血管が傷んでしまい、目の見えにくさ(糖尿病性網膜症)、腎不全で人工透析を必要とする状態(糖尿病性腎症)、手足のしびれ感(糖尿病性神経障害)などの合併症をきたしてしまいます。
また、動脈硬化の悪化も伴うため、心筋梗塞や脳梗塞を発症するリスクが上がります。
さらには、免疫に関わる細胞の機能が低下するため、感染症にかかりやすくなったり、傷口が治りにくくなったりなどの症状もみられます。
◎糖尿病の初期症状
血糖値の上昇の程度が軽い、糖尿病の初期だと自覚症状がないこともあります。また、ご高齢だと症状がはっきりとしないこともあります。
上記の症状以外にも、最近疲れやすい、すぐに横たわってしまう、なんだかぼんやりしている、程度の自覚症状が血糖値の悪化と関係していることもある5ので、これらの症状がみられる場合は医療機関に相談しても良いでしょう。
■糖尿病の原因
膵臓から分泌されるホルモンであるインスリンが十分に働かないことが糖尿病の原因です。インスリンの働きが十分ではなくなってしまう原因は、糖尿病のタイプによって異なります。
2型糖尿病となる原因は、遺伝的な影響に加えて、食べ過ぎ、運動不足、肥満などの環境的な影響があるといわれています。
1型糖尿病はインスリンを分泌する細胞が壊れることで生じます。妊娠糖尿病は胎盤から分泌されるホルモンの影響でインスリンが効きにくくなることも原因と言えます6。
■糖尿病は治るのか?
糖尿病は治るのか?という疑問を持つ方もいるかもしれません。
糖尿病に対して、食事療法や運動療法、薬物療法を行って糖代謝が正常になっても、一度糖尿病と診断された場合は、その後も糖尿病とみなして取り扱う7こととされています。
このため、この疑問に対しては、「糖尿病は治らないが、治療によって薬物療法が不要となることがある」という答えが適切でしょう。
糖代謝が改善しても、血糖値が上がりやすい体質そのものは変わりません。このため、薬物療法が中断された場合であっても、食事療法や運動療法は継続して行う方が良いでしょう。
簡単に治療の概要について説明します。
◎食事療法
食事療法の基本は、体重と活動度に合わせた適切なカロリーをバランスよく摂取することです。主治医や管理栄養士に相談すると、具体的な内容を知ることができます。
また、食習慣の工夫や食べ方の工夫も行うと良いでしょう。
◎運動療法
糖尿病の運動療法に関しては、以下の方法が勧められています8。
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頻度 : 週に150分以上、週に3回以上
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運動強度 : 中等度(ややきつい)の全身を使った有酸素運動
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運動持続時間 : 20分以上
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その他 : 連続しない日程で週に2~3回のレジスタンス運動
◎薬物療法
内服薬、インスリン療法があります。詳細については今後ブログ内でご紹介します。
■まとめ
糖尿病の症状や原因などについて概要を説明しました。
糖尿病の初期は目立った症状がないため、症状が進行してから受診する方も少なくありません。早めの治療介入を行った方が、合併症のリスクを減すことができ、より健康に過ごすことができます。
みなさまの糖尿病に関するお悩みに、日本糖尿病協会登録医が寄り添い、一緒に解決法を見つけます。
ぜひ、当院へご相談ください。
<参考文献>
1, 鳥本 桂一,他.2型糖尿病と血管内皮障害.産業医科大学雑誌40(1):65-75. 2018
2, 曽根 博仁,他.日本人の2型糖尿病患者の特徴と病態についての臨床疫学.日内会誌 102:2714-2722. 2013
3, 国立健康危機管理研究機構 糖尿病情報センター.診断と検査
4, 長坂昌一郎.高血糖緊急証・低血糖.日内会誌 101:2085-2090. 2012
5, 国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター.糖尿病の症状ってなに? ~無自覚に進行させないために~
6, 国立健康危機管理研究機構 糖尿病情報センター.糖尿病とは
7.日本糖尿病学会.糖尿病診療ガイドライン2024.1章 糖尿病診断の指針 P.23
8.厚生労働省.e-ヘルスネット 糖尿病を改善するための運動