仕事や子育てなど、忙しい毎日のなかで糖尿病の治療をつい先延ばしにしていませんか?
糖尿病を治療せずに年月が経過すると、脳梗塞や心筋梗塞などの重大な病気だけでなく、身体に思わぬ合併症を引き起こし、生活の質が下がってしまうリスクが高まります。
以前、ブログ内で糖尿病の初期症状や原因について解説しました。
(参考記事:『意外と知らない糖尿病 初期症状や原因について解説』)
今回は、「糖尿病の治療をしないとどうなってしまうのか?」という不安にしっかりお応えしながら、治療薬や生活習慣の改善までの全体のイメージがつかめるように、ポイントを押さえてお伝えします。
■糖尿病を治療しないと、身体の中では何が起きている?
糖尿病は、すい臓で作るインスリンが足りなくなったり、効かなくなったりして、血液中のブドウ糖が細胞に入ることができなくなり1、血糖値が慢性的に高くなる状態を指します。
血糖が慢性的に高くなることで、血液の浸透圧が高くなったり尿中に糖分が漏れ出したりします。それを補うために余計にのどが渇く、尿の回数が増えるなどの症状が出て気づくこともありますが、初期にはあまり目立った症状はありません。
糖尿病をそのままにしておくと、高血糖状態によって血管内皮機能が障害され2、動脈硬化が進んでしまいます。
動脈硬化が進むと、脳卒中や虚血性心疾患(心筋梗塞など)の発症へとつながります。また、その他にも、網膜症、腎症、神経障害のなどの3大合併症を引き起こし1、失明、人工透析を必要とする状態1、手足のしびれ感やめまいが起こりやすい状態など、生活の質を下げるさまざまな病気の発症させる可能性があります。
■生活習慣の改善が糖尿病治療の最初の一歩
糖尿病の治療を開始する場合、まずは生活習慣の見直しから始めます。
糖尿病の程度が軽度であれば、これらの改善だけで改善することもあります。さらに、糖尿病治療薬を使用する場合であっても、生活習慣が乱れると、コントロールが難しくなり合併症の発症のリスクが高まってしまいます。
生活習慣の見直しによる糖尿病の治療は、主に食事療法と運動療法に分かれます。
◎食事療法
食事療法の基本は、体重と活動度に合わせた適切なカロリーをバランスよく摂取することです。主治医や管理栄養士に相談すると、具体的な内容を知ることができます。
また、食習慣や食べ方の工夫も行うと良いでしょう。
食事療法についてはこれまでのブログ記事のなかでご紹介しています。こちらもぜひご覧ください。
(参考:『糖尿病の食事におすすめのメニュー|ダメなものってある?』)
◎運動療法
糖尿病の運動療法に関しては、以下の方法が勧められています3。
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頻度 : 週に150分以上、週に3回以上
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運動強度 : 中等度(ややきつい)の全身を使った有酸素運動
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運動持続時間 : 20分以上
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その他 : 連続しない日程で週に2~3回のレジスタンス運動(筋肉に負荷をかける運動)
■糖尿病治療薬の種類
糖尿病治療薬は、機序から大きく3系統にあり、さらに10種類に分かれます4。
膵臓からのインスリンの分泌能力、治療開始時の糖尿病の程度、年齢、併存疾患、生活スタイルなどを参考に選択します。主な糖尿病の治療薬とその特徴について下記の表にまとめました。
<糖尿病治療薬の種類>
(*)糖尿病昏睡・ケトアシドーシス、重度の肝障害・腎障害・感染症、妊娠、当該薬剤による過敏症の既往
※文献4を参考に作成
これらの治療薬は、一人ひとりの薬への反応性をみながら、オーダーメイドで薬の追加や変更が検討されます。
■まとめ
糖尿病を治療しないで過ごした場合のリスクや、治療内容について説明しました。
糖尿病は進行してしびれ感や眼のかすみなどが出現してから受診する方も少なくありません。
これらの症状は一度出現するともとに戻らない可能性もあります。そのため、早めの治療を行い、合併症のリスクを下げることが望まれます。
糖尿病に関するお悩みがある場合は、ぜひ当院へご相談ください。
一人ひとりにあったオーダーメイドの治療を提案し、長く健康にいるためのサポートをいたします。
<参考文献>
2, 鈴木登紀子,他.血管変動と血管内皮~糖尿病性血管障害の発症と防止機構への新たなアプローチ~.血管.2017;40(2):69-77
3, 厚生労働省.e-ヘルスネット 糖尿病を改善するための運動.
4, 日本糖尿病・生活習慣病ヒューマンデータ学会.糖尿病標準診療マニュアル2025 一般診療所・クリニック向け.