「片頭痛はつらいけど、薬はなるべく飲みたくない」、「妊娠中や授乳中だから薬を使いにくい」、「子どもが片頭痛で困っているけれど、できるだけ薬を使わない方法はないのか」。薬を使わない片頭痛の対策について考えたことはありませんか。
今回は片頭痛の誘因や日常生活でできる片頭痛の対策についてご紹介します!
目次
1) 片頭痛を誘発させるものは?
片頭痛をお持ちの方は、例えば「そろそろ生理だから頭痛がひどくなるはず」、「これ以上寝不足になると翌日頭痛がおこる」などのご自身の中でトリガーの心当たりがあるのではないでしょうか。
片頭痛の誘発因子は頻度別にこれらの項目が挙げられます(1)。
頻度 |
症状 |
50%~ |
ストレス(79.7%)、女性ホルモン(65.1%)、絶食(57.3%)、天候(53.2%) |
30~50% |
睡眠障害(49.8%)、香水やにおい(43.7%)、頸部の痛み(38.1%)、光(38.1%)、アルコール(37.8%)、夜更かし(32.0%)、暑さ(30.3%) |
~30% |
食品(26.9%)、運動(26.9%)、性的活動(5.2%) |
日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会監修 頭痛の診療ガイドラインを参考に作成
片頭痛の患者さんの半数以上がこれらの中で4~9個の因子を持っていると言われています。また、特に睡眠については寝不足も寝過ぎも片頭痛の誘因になります。
片頭痛発作の前兆の有無でも誘因の頻度に差がありますが、前兆のある片頭痛患者の方が誘因を持つ頻度が高いようです(2)。
2) 片頭痛の非薬物療法とは
では薬を使わずに片頭痛を改善させる方法はないのでしょうか。
まずは片頭痛の誘因を避けることが重要です。睡眠の過不足や絶食などは、工夫次第で避けられる誘因でしょう。
このほか、片頭痛の非薬物療法についてご紹介します。日本頭痛学会が示しているガイドラインでは以下の3つの治療について紹介されています。簡単に内容を紹介します。
-認知行動療法(認知療法、バイオフィードバック、リラクセーション)
片頭痛患者と医師、看護師、心理職などの医療者とともに行います。まずは、患者が自分自身の視点、医療者からの視点で片頭痛の状態を多角的に理解します。次に、筋電図などの検査で、筋肉の緊張状態があることを認識するバイオフィードバックを行います。そして、リラクゼーションを行います。リラクゼーションには筋肉の緊張を低下させ,痛みや疲労を緩和させる効果(3)があります。
近年、認知行動療法が、特に小児の片頭痛で有効と報告されています(1)。
-ニューロモデュレーション(磁気刺激、電気刺激)
国内では保険適用ではないため、簡単な説明にとどめます。ニューロモデュレーションとは、頭痛に影響しうる神経に、特殊な機械を用いて磁気や電気刺激を行って、神経機能を調節する治療法です。この治療法は海外で広く用いられ、比較的安全で有効性が高いとされています。
-鍼治療、有酸素運動
統計学的には十分な論拠はありませんが、いずれも片頭痛を改善させる可能性があります。有酸素運動に関しては、片頭痛の負担軽減には筋力トレーニングによる運動療法が最も有効であり、次いで高強度の有酸素運動が有効であった(4)という最近の文献もあります。
ただ、これらの非薬物療法は、薬物治療で効果が乏しいケースや妊娠・授乳中などのケースに考慮されているようです。薬物療法との組み合わせで、より一層高い効果が期待されるでしょう。
3) 片頭痛を起こしにくい食事やサプリメント
もっと日常的に片頭痛を起こさないようにする工夫はないのでしょうか。より取り組みやすいのは普段の食事や、サプリメントの摂取などでしょう。
コエンザイムQ10やナツシロギク、マグネシウム、ビタミンB2は片頭痛予防に有効と言われています(1)。
マグネシウムは納豆や豆腐などの豆類、ゴマなどのナッツ類、ヒジキやのりなどの海藻類やキノコ類に多く含まれています。また、ビタミンB2が豊富な食品はレバー、牛乳やほうれん草などです。これらを日常の食事に取り込むと良いでしょう。
また、規則正しい食事や体重減少は、頭痛負担の減少と関連している(5)ため生活習慣の改善も合わせて行うと良いでしょう。
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片頭痛を誘発させる因子や、薬以外で対処できる方法を身近なものから専門的なものまでご紹介しました。頭痛に関する不安は多いはずです。小さなことでも大丈夫です、頭痛や脳の専門家である神経内科専門医、当院にぜひご相談ください。
<参考文献>
(1)日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会 監修.頭痛の診療ガイドライン2021
(2)Russell MB, Ramussen BK, Fenger K et al : Migraine without aura and migraineurs from the general population. Cephalalgia 1996 ; 16(4):239-245
(3)嶋 美香.片頭痛の認知行動療法.心身医 2023;63(5):424-429
(4) Woldeamanuel YW, et al. J Headache Pain. 2022;23:134.
(5) Moskatel LS et al. Curr Neurol Neurosci Rep. 2022 Jun;22(6):327-334.