片頭痛の予防や悪化に、食事が影響しうることを知っていますか?
今回は、片頭痛のある人は知っておきたい、片頭痛予防に良い食べ物・飲み物をご紹介します!
【片頭痛予防に良い食事と摂取量】
片頭痛予防に向いている食事について、推奨される摂取量もあわせて説明します。
①マグネシウム
片頭痛の予防療法としてすでに用いられているバルプロ酸(800mg/日)」とマグネシウムの効果を比較した臨床研究では、「500mg/日」の酸化マグネシウムはバルプロ酸と同様に、片頭痛予防に有効で大きな副作用がない(1)と報告されています。
マグネシウムは、加工の少ない主食、豆腐類、海藻類やナッツ類、野菜類に多く含まれています。
<マグネシウムを含む食材の例>
食品、食事 |
1食あたりのマグネシウム含有量(mg) |
そば(乾麺) |
100 |
玄米 |
78 |
オートミール |
80 |
全粒粉パン |
26 |
絹ごし豆腐(1/4丁) |
75 |
納豆 |
50 |
アボカド |
48 |
ごま(大さじ1) |
33 |
ほうれん草のおひたし |
33 |
バナナ |
29 |
わかめスープ |
27 |
干し海苔(1枚) |
10 |
※カロリーSlismを参考に作成
普段の食事に玄米を取り入れる、副菜にごまを加えるなどの工夫をすると、1日500㎎のマグネシウムを摂取することは難しくはありません。
また、便秘に対して「酸化マグネシウム」はよく処方される内服薬の一つです。
片頭痛に加えて便秘がある場合は、酸化マグネシウムの使用を考えてみても良いかもしれません。
②ビタミンB2
片頭痛に対するビタミンB2の予防効果は、臨床試験によって結果が分かれているものの、比較的有用である可能性がある(2)と言われています。
有効だと報告している文献群では、少なくともビタミンB2の投与を「200mg/日」としていました。
ビタミンB2を多く含む食品は、魚介類、肉類、海藻類、豆類、乳類、卵類、野菜類などです。
<ビタミンB2を含む食材の例>
食品、食事 |
1食あたりのビタミンB2含有量(mg) |
牛乳 |
0.31 |
卵 |
0.19 |
カツオのたたき(6切) |
0.17 |
豚の生姜焼き |
0.18 |
鶏のから揚げ(中3個) |
0.14 |
鮭の切り身 |
0.12 |
絹ごし豆腐(1/4丁) |
0.12 |
ほうれん草のおひたし |
0.09 |
わかめスープ |
0.08 |
※カロリーSlismを参考に作成
上記の表より、片頭痛予防の観点で食事からビタミンB2を十分に摂取するのは困難と言えます。
ビタミンB2の内服薬はあるものの、片頭痛の予防については適用がないため、サプリメントなどで補ってみてもよいでしょう。
③コエンザイムQ10
サプリメントで有名なコエンザイムQ10も、片頭痛予防において期待されています。しかし、ビタミンB2と同様に、文献によって結果が分かれています。有効だと報告している文献では、コエンザイムQ10の摂取量が「300mg/日」のものや、コエンザイムQ10とL-カルニチンやナノクルクミンなどのサプリメントを併用したものなどがあります。
コエンザイムQ10が多く含まれる食品には、イワシやサバなどの青魚、牛肉、ナッツ類です。
<コエンザイムQ10を含む食材の例>
食品、食事 |
100gあたりのコエンザイムQ10含有量(mg) |
イワシ |
6 |
サバ |
4 |
牛肉 |
3 |
ピーナッツ |
3 |
ブロッコリー |
1 |
※Kamei. M et al(1986)をもとに作成
ビタミンB2同様、食事から十分な量を摂取することは難しいため、サプリメントの併用を考えても良いでしょう。
④ナツシロギク
ハーブで知られているナツシロギクは、古くから片頭痛予防の効果に注目されています。摂取量が82mgで有効という文献や143mgで無効という文献もあるので、推奨される摂取量は不明です。
ナツシロギクはハーブティーやサプリメントなどで摂取できます。
⑤ケトジェニック食や低カロリー食
①~④以外で、片頭痛予防に良いと言われている食事方法が近年の海外の文献で報告されています。
肥満の頭痛患者における減量食、ケトジェニック食および低カロリー食、オメガ6脂肪酸摂取量の減少、およびオメガ3脂肪酸摂取量の増加(3)などが片頭痛予防に期待されています。
【片頭痛を誘発、悪化させる食事】
片頭痛を悪化させる食品もあると言われていますが、その真偽は不明です。
一般的には赤ワインやチーズ、コーヒーやチョコレートなどであると認識している方もいるかもしれません。確かに、1990年代の文献ではそのような内容のものが散見されていました。
一方で、2023年の文献では、白パンやコーンフレーク、鶏肉の摂取が片頭痛のリスクとなり、コーヒーやチーズ、脂分の多い魚、アルコール(赤ワイン)、生野菜、ミューズリー、全粒粉パンの摂取が片頭痛のリスク低下と関連を示す(4)と報告されていました。
他にも、国内の調査で、片頭痛の人は頭痛のない人に比べてコーヒーやお茶の消費が多いと報告されているものの、米国の調査では、片頭痛の人と頭痛のない人とではカフェイン入りコーヒーを飲む頻度に差はない(5)という報告もあります。
このように、片頭痛を悪化させる食品については諸説あり、個人の背景因子にも左右されると考えられます。
片頭痛へのアプローチの方法は薬、食事などさまざまの方法があります。
お困りの場合は神経内科専門医の当院へご相談ください。
<参考>
(1)Karimi N et al. The Efficacy of magnesium oxide and sodium valproate in prevention of migraine headache : a randomized, controlled, double-blind, crossover study. Acta Neurol Belg 2021;121(1):167-173
(2) 日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会 監修.頭痛の診療ガイドライン2021
(3)Soodeh Razeghi Jahromi et al. Association of diet and headache. J Headache Pain 2019 Nov 14;20(1):106.
(4)Xinhui Liu et al. Association between dietary habits and the risk of migraine : a Mendelian randomization study. Front Nutr. 2023 Jun 7:10:1123657
(5)工藤 雅子 監修. 食事と片頭痛の関係:嗜好品は頭痛を誘発する? 片頭痛コントロール