冬になると頭痛の頻度が多くなりませんか?
寒い中出かけたせいか、耳も頭も痛くてつらい、そんな冬の頭痛に心当たりはありませんか?
今回は冬になると増える頭痛について、その原因と予防法について解説します。
冬になると頭痛が増えてしまう原因は、次の2つが考えられます。
①寒冷刺激が直接頭痛に影響を与えている可能性
②寒さから身を守るために筋肉を収縮させ続けた結果、頭痛に影響を与えている可能性
①は寒冷刺激による頭痛、②は緊張型頭痛を考えます。
①寒冷刺激による頭痛
一般的な生涯有病率は15%~37%と言われていて、特に子どもの有病率は高くおよそ40.6%~79%と報告されています(1)。このため、これまでの人生の中で1度は経験している方も多いのではないでしょうか。
寒冷刺激による頭痛でよく知られているのは、アイスを食べた後のキーンとするような痛みです。そのほかに、ダイビングやサーフィン、冷水浴、スケート、凍結療法など、頭部を非常に低い環境温度にさらした後に発症しうるとして様々な文献で調査がなされています。
しかし、そのメカニズムはまだ完全には解明されていません(1)。
現時点では、主な要因は「局所の血管および脳血管の変化」、「寒冷受容体の直接刺激」であると言われています。
要は、急激な寒暖差で血管がギュッと締まったり拡がったりすることで、頭痛に関与する三叉神経が過剰に反応する、または、冷たい刺激が顔の表面や口の中にある感覚神経を刺激することで頭痛が起こりやすくなるということです。
前者であればズーン、ズーンもしくはズキンズキンとした心臓の拍動と合わせたタイミングの痛みで、後者であれば刺すような痛みが想定されます。
一見、寒暖差が大きければ大きいほど、そして冷たければ冷たいほど寒冷刺激による頭痛は生じやすいように見えますが、実際のところは下記のようにはっきりしません。
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氷水(0℃)によって誘発される頭痛は、はるかに低い温度(-16℃)の角氷によって誘発
される頭痛と比較して、潜伏期間が短く、疼痛強度が高かった(2)
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100mLのアイスクリームを2つの異なる速度(30秒以上と5秒未満)で食べる2つの
学生グループにおいて、寒冷刺激による頭痛の発生率は、慎重に食べるグループ(13%)に比べて、加速して食べるグループ(27%)で高い(3)
いずれも、刺激の方法が異なるため正確な比較とはなりません。
しかし少なくとも、寒冷刺激で頭痛は起こりうるため、これらを予防する方法は、寒さの程度によらず寒暖差をなるべく小さくすることが大切でしょう。
たとえば、室内に入るときは上着を早めに脱ぐ、出かけるときはなるべく暖かくして出かけるなど、対策はごく一般的なことではありますが、実践しやすいことでもあるので、気を付けるようにしましょう。
②緊張型頭痛
原因は不明ですが、一般的には肩こりからくる頭痛などともいわれています。国内での年間有病率は22.4%です(4)。
寒さと関係しうる部分で考えると次のように考えられます。
寒さで体温が下がる→無意識に身震いをする、首をすぼめる→筋肉の収縮を促し熱が産生されて体温が上がる、頸動脈を覆うため熱の放散を減らすことができる→体温は維持されるが、結果的に特に首回りの筋肉がこわばる→肩こりになりやすくなる
上記のような仕組みを考えると、特に首回りを中心に温める、暖かい服装をするなどを心がけるとよいでしょう。
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今回は、冬に起こりやすい頭痛について説明しました。
冬の頭痛を引き起こすような、血管の急激な収縮や拡張がある場合に、中高年以上の方は特に注意が必要です。血圧が高い状態が続くと、動脈硬化が悪化し脳出血などの危険な病気につながってしまいます。
ご心配な方は当院へご相談ください。
<参考文献>
(1)Ilaria Bonemazzi , et al . Cold-Stimulus Headache in Children and Adolescents. Life 2023, 13, 973
(2)Mages S. et al. Experimental provocation of ‘ice-cream headache’ by ice cubes and ice water. Cephalalgia 2016,37,464-469
(3)Kaczorowski M. et al. Ice cream evoked headaches (ICE-H) study: Randomized trial of accelerated versus cautious ice cream eating regimen. BMI 2002, 325, 1445-1446
(4)日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会 監修.頭痛の診療ガイドライン2021