「頭痛くらいで病院なんて・・・」と思っていませんか?
頭痛は身近な病気であるために、病院を受診して良いものか悩んでいる方も少なくないでしょう。
市販薬で済ませたいと思う方も含めて、頭痛で病院を受診する目安や、頭痛で何科を受診したらよいのか、などについて解説します。
頭痛の程度や緊急度によって、以下の4パターンが考えられます。
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命に危険が及ぶ可能性が高く、すぐに救急受診をすべき頭痛
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放っておくと命に危険が及ぶ頭痛
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病院を受診した方が、生活の質がよくなる頭痛
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市販の鎮痛解熱薬・頭痛薬で様子をみることができる頭痛
それぞれについて、受診の目安や受診すべき科について説明します。
①命に危険が及ぶ可能性が高く、すぐに救急受診をすべき頭痛
頭痛によっては、命に危険が及ぶため一刻も早く病院を受診した方が良いものがあります。
脳出血・クモ膜下出血や脳炎、急性緑内障発作などがその代表例です。これらは対応が遅くなるほど後遺症の懸念もあるため、疑う場合は救急受診をしましょう。今まで経験したことのないような激しい頭痛や、吐き気や嘔吐を伴う頭痛、急激な目の痛みを伴う頭痛などが特徴です。
このような症状で救急受診をしても、実は緊急性のない頭痛だった、というパターンは救急外来では少なくありません。
しかし、危険度の高い頭痛だった場合に、発症直後の対応のおかげで危険な状態を回避することができるため、このような症状の場合は躊躇せずに救急受診をするようにしましょう。
②放っておくと命に危険が及ぶ頭痛
救急車を呼ぶほどではないものの、症状によっては2週間弱を目安に受診した方がよい頭痛があります。
脳腫瘍などがその代表例です。1週間以上続く頭痛や、目のかすみ、嗅覚異常などを伴う頭痛の場合は、そのままにせずに医療機関を受診するようにしましょう。CTやMRIなどの画像評価も含め、脳神経外科の受診をおすすめします。
①や②でみられる頭痛は、何らかの原因によって二次的に発生する「二次性頭痛」です。風邪や二日酔いなどのわかりやすい原因がない場合の頭痛には、危険な病気が隠れている可能性があるので、頭痛の程度や頭痛に伴ってみられる症状に注意するようにしましょう。
③病院を受診した方が、生活の質がよくなる頭痛
病院を受診した方が生活の質がよくなる頭痛は、①や②のような「二次性頭痛」ではなく、頭痛そのものが病気である「一次性頭痛」に含まれています。
片頭痛や群発頭痛などがその代表例です。頭痛が起こっているときに使う薬や対処、何度も起こってしまう頭痛の予防などを行うことで、生活の質の改善が期待できます。頭痛の程度がご自身の感覚で中程度以上の場合や、頭痛を3ヶ月以上繰り返している場合は脳神経内科の受診をおすすめします。
片頭痛は、月に数回の軽い頭痛であれば一般的な頭痛薬で様子を見ても良いですが、中程度以上の頭痛がある場合はトリプタン系やジタン系などの片頭痛に特化した薬を使うことがあります。
片頭痛発作が月に2回以上、あるいは生活に支障をきたす頭痛が月に3日以上ある(1)場合は、予防療法が勧められます。予防療法については、従来の内服薬に加えて、2020年代以降に認可された新薬もあります。予防ができれば頭痛がほとんどなくなり、生活の質が上がる方もいます。
群発頭痛に関しては、発作期にトリプタン系の薬剤や高濃度酸素療法などを行います。予防薬については、発作期の治療ほど確立されたものはありませんが、一部の薬剤に対して効果が見込まれています。
他にも、有病率の高い群発頭痛の頭痛発作期の治療や予防療法については、片頭痛ほどではありませんが、治療を行うことも可能です。
④市販の鎮痛解熱薬・頭痛薬で様子をみることができる頭痛
軽い頭痛の場合は、いったん市販薬で様子を見てもよいでしょう。
しかし市販薬は、さまざまな成分が配合されている総合感冒薬となっていることが多いため、飲み合わせに注意が必要です。
小さい子どもや妊婦、授乳婦、高齢者で避けた方が良いもの、中高年男性で尿閉を誘発しやすい成分を含んでいるもの、そのほかアレルギーなどを考慮すると、購入の際には薬剤師に相談することをおすすめします。
心配がある場合は、脳神経内科や内科などの外来で相談すると良いでしょう。
また、市販薬でも使用頻度が月に10回以上の場合は、薬の使い過ぎによる頭痛(薬剤乱用頭痛、medication-overuse headache:MOH)を引き起こし、頭痛の状態がさらに悪化する可能性があります(2)。
この場合は、使用薬剤の種類や使い方、非薬物療法なども検討した方が良いでしょう。使用頻度が増えてきている場合は医療機関へご相談ください。
これ以外でも、頭痛で外来受診を迷う場合は、ご自身の状態の把握のために医療機関を受診することも大切です。
脳神経内科専門医が診療を行います。頭痛で病院って行ってもいいの?と迷っている方は、当院へご相談ください。
<参考文献>
(1)日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会 監修.頭痛の診療ガイドライン2021
(2)永田 栄一郎.一次性頭痛:薬剤の使用過多による頭痛(薬事乱用頭痛,MOH)-典型例,その診断と治療. 日内会誌 112: 1371~1376,2023