「最近、頭痛薬が効かない気がする」、「鎮痛薬の副作用が怖い」、「毎日頭痛薬を飲んだらダメだと言われた」…こんな心当たりはありませんか?
職場や身近な人間関係のストレスや子どもの不登校、睡眠不足、ひどい月経など、私たちは頭痛を起こしやすい環境や条件に置かれていることが多く、頭痛薬を使用する機会は少なくありません。
頭痛薬(鎮痛解熱薬)はとても頼りになる味方ではありますが、使い方次第では身体に悪影響を及ぼす危険性があります。
今回は頭痛薬の副作用や、近年急増している「頭痛薬で起こる頭痛」についてご紹介します。
1)頭痛薬(鎮痛解熱薬)の種類について
病院で処方される頭痛薬の種類はいくつかありますが、まずは市販の頭痛薬(鎮痛解熱薬)に焦点を絞ってご紹介します。
最近はドラッグストアだけでなくECサイトでもこれらの頭痛薬は購入ができるため、気軽に手に入るようになりました。
いろいろな商品があり、どれを選んだらいいかわからない、そんな悩みもあるでしょう。
市販の頭痛薬の主成分は大きく分けて2種類あります。1つはアセトアミノフェンで、もう1つは非ステロイド性抗炎症剤(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs(NSAIDs))です。
ほとんどの皆さんは、薬剤の箱に記載された成分をみてもピンとこないはずです。
ざっくりというと、頭痛薬の成分でアセトアミノフェンの記載のないものがNSAIDsです。市販のものだとアセトアミノフェンとNSAIDs 両方の成分が含まれているものもあります。子ども用と書かれているものは、アセトアミノフェンのみの主成分だと考えても良いでしょう。
これらの成分そのものは、病院処方の頭痛薬と変わりはありませんが、使い方で記されている1回量は病院で処方される内服薬の1回量と異なる場合があります。
2)頭痛薬の副作用について
アセトアミノフェンとNSAIDsは痛みを抑える機序が異なります。
また、アセトアミノフェンはNSAIDsに比較すると痛みを抑える作用は弱いです。しかし、副作用で知られている急性肝障害の発現頻度はそれほど高くはなく、100万例に対し10例程度の発症であると推測している報告もあります(1)。
NSAIDsは薬剤の種類によって、作用の強さも副作用も異なります。NSAIDsの4大有害反応と言われている副作用(2)は、胃腸障害、薬剤性腎障害、抗血小板作用による易出血性、アスピリン喘息です。胃腸障害と出血のしやすさの副作用に対して、胃薬を合わせて使用することも多いです。
頭痛に限った話だと、アセトアミノフェン、NSAIDsいずれも使い過ぎにより頭痛が悪化することも副作用の一つと言って良いでしょう。
さらに、アセトアミノフェンとNSAIDs以外でも、医療機関で処方される頭痛発作の急性期に使用するトリプタン、エルゴタミン、オピオイドなども使い過ぎにより、頭痛が悪化するため注意が必要です。
3)頭痛薬の使い過ぎで起こる薬剤乱用頭痛について
頭痛薬の使い過ぎでさらに頭痛が悪化する、「薬剤乱用頭痛(Medicine-overuse headache (MOH))」というものがあります。
頭痛を治すための頭痛薬で、なぜ頭痛が悪化するの?と思う方もいるかもしれません。
現時点ではその原因は不明ですが、喫煙や運動不足により有病率は2倍以上(3)であると言われており、様々な要因が関係していると考えられます。
薬剤乱用頭痛の頻度は低くなく、1年間の有病率は1~2%である(4)と言われています。片頭痛や緊張型頭痛の患者様において、頭痛薬の使い過ぎの状態で新しいタイプの頭痛が出現したり、既存の頭痛がさらに悪化したりする場合は薬剤乱用頭痛を疑います。
頭痛薬の種類にもよりますが、1か月に10日以上の使用頻度が2か月以上続いている場合は薬剤乱用頭痛の可能性を考えて、医療機関に相談した方が良いでしょう。できれば、「頭痛外来」や「脳神経内科外来」などの専門外来の受診をお勧めします。
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近年急増している「薬剤乱用頭痛」についてご紹介しました。
薬剤乱用頭痛は、治療介入によって改善が見込めます。また、頭痛薬の使い過ぎにより、身体に様々な副作用が起こることもあるので、なるべく早めに専門外来を受診しましょう!
<参考文献>
(1) 熊谷雄治ら.高用量アセトアミノフェン投与時の肝機能値以上に特定しよう成績調査データを用いた定量解析. Jpn J Clin Pharmacol Ther 2016; 47(2):31-37
(2) 平田純生ら. NSAIDsによる腎障害-COX-2阻害薬およびアセトアミノフェンは腎障害を起こすか-. 日腎会誌2016;58(7):1059-1063
(3) 日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会監修.頭痛の診療ガイドライン2021
(4) 荒木 信夫. 頭痛の病態生理と治療.日本内科学会雑誌 2014;104(3):502-507