真夏の暑い日差しの中を出かけた後、頭痛でダウンしていませんか?エアコンの風が直接当たる席で長時間作業をすると、ズキズキした頭痛に悩まされていませんか?
かき氷を食べた後のキーンとするような頭痛、水泳でゴーグルをした後の頭痛、浴衣に合わせて髪型をお団子ヘアにした後の頭痛など、実は頭痛が身近に潜んでいるのが夏です。
今回は、「夏」に起こりやすい頭痛について解説します!
1) 実は熱中症かも!暑い夏の頭痛
「一日中外にいたからへとへとで、なんだか頭が痛い。疲れたからかな。」なんて経験はありませんか?
また、せっかくのお出かけ日和に、片頭痛持ちの友人が出かけるのを嫌がったりしていませんか?
夏の強い日差しと暑さは、頭痛と深い関係があります。その理由は大きく2つあります。
①熱中症の症状の1つ
日射病や熱射病などいろいろな言葉がありますが、熱中症とは「暑熱環境における身体適応の障害に起こる状態の総称」(1)と定義されています。
熱中症の症状はⅠ度(軽症)、Ⅱ度(中等症)、Ⅲ度(重症)の3段階で定義され、下記の症状がみられます。
熱中症の程度 |
症状 |
対処 |
Ⅰ度
|
めまい、立ちくらみ、生あくび、大量の発汗、筋肉痛、こむら返り |
応急処置と見守りが中心。冷所での安静、体表の冷却、水分摂取と塩分摂取 |
Ⅱ度 |
頭痛、嘔吐、倦怠感、虚脱感、集中力や判断力の低下 |
医療機関の受診をする。体温管理、安静、十分な水分と塩分補給(飲めない場合は点滴で補う) |
Ⅲ度 |
意識障害や痙攣、腎機能障害、肝機能障害など |
入院加療。体温管理、呼吸管理、循環管理など |
<表1>日本救急医学会「熱中症分類2015]を参考に作成
※Ⅲ度の中で特に重篤な状態があることから、2024年7月に日本救急医学会が熱中症の重症度分類を見直す方針を発表しています。
このため、暑い環境で見られる頭痛は熱中症の中等症である可能性があるので、とても注意が必要です。その際は、医療機関を受診するようにしましょう。
②片頭痛発作の誘因
片頭痛の発作を誘発させる要因に「天候の変化」、「温度差」や「光」があります(2)。
つまり、夏特有の夕立などの急激な天候の変化、猛暑の野外から冷房の効いた施設に入ったときの温度差、まぶしい日差しそのものが、片頭痛持ちの人にとってはつらい頭痛を引き起こすものである可能性が高いのです。
2) 冷たい刺激による頭痛
野外から冷房の効いた施設に入ったときの「温度差」が、片頭痛の誘因になることは先ほどお話しました。
このほかにも、アイスクリームやかき氷などの冷たいものを摂取すると頭がキーンとする、いわゆる「アイスクリーム頭痛」などがあります。これは実際に、国際頭痛分類にも「寒冷刺激による頭痛」として分類されています。
片頭痛を有する人において生じる頻度が高く、頭痛は前頭部や側頭部に、通常両側性に生じます。これらは寒冷刺激除去後10分以内に消失することが多いです。
また、大人よりも子どもにみられやすいと言われている(3)ので、子どもがかき氷を食べるときなどは気を配ってあげた方がよいでしょう。
3) ゴーグルや髪型も?夏によくある頭痛
頭の締め付けなどで頭痛がみられるケースもあります。
「頭蓋外からの圧迫による頭痛」、「頭蓋外からの牽引による頭痛」などと言われています。きついヘッドバンドやヘルメット、水泳中のゴーグルの装着のような圧迫や、お団子ヘアやポニーテールなどの頭皮を引っ張るような髪型で起こることがあります。
いずれも頭皮に障害を起こさない程度のものではありますが、それらの刺激を解除した後1時間以内に痛みが消失するのが特徴の一つです(4)。
頭皮を絞めつけ過ぎないように調整する、髪ゴムをゆるくするなどの工夫をすると良いでしょう。
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夏に多い頭痛について説明しました。
「熱中症による頭痛かもしれない」と不安になった場合は、ご遠慮なく当院にご相談ください。
頭痛についてよく知ることで、今年の夏はもっと快適に過ごせるでしょう!
<参考文献>
(1)日本救急医学会 監修.熱中症診療ガイドライン2015
(2)日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会 監修.頭痛の診療ガイドライン2021
(3) Ilaria Bonemazzi , Maria Federica Pelizza, et al: Cold-Stimulus Headache in Children and Adolescent. 2023 Apr 9;13(4):973
(4) 日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会 監修. 国際頭痛分類第3版