春になると、健康診断を実施する会社も多いのではないでしょうか?普段血圧を気にしたことがない方でも、必ずご自身の血圧をチェックする機会になります。また、普段よく耳にする「血圧」について、基準となる数値を知らない方も少なくありません。
今回は、高血圧、低血圧など基準やなりやすい人について解説します。
目次
■健康診断での正常の血圧は120/80mmHg未満。高血圧と低血圧、平均血圧の数値は?
「血圧、正常値」などの単語をインターネットで検索すると、正常の血圧は120/80mmHg未満と答えるサイトが少なくありません。
これに続いて、詳しく説明する単語として「診察室血圧」、「家庭血圧」、「正常高値血圧」、「高値血圧」、「(Ⅰ度、Ⅱ度、Ⅲ度)高血圧」、「(孤立性)収縮期高血圧」などの単語が出てくるはずです。
具体的な数値について確認しながら、「どの数値になったら注意が必要なのか」について説明します。
◎高血圧の基準値と、注意が必要な数値は?
血圧の正常値や、高血圧の程度ごとの数値は表のようになります1。
分類 |
診察室血圧(mmHg) |
||
正常血圧 |
<120 |
かつ |
<80 |
正常高値血圧 |
120-129 |
かつ |
<80 |
高値血圧 |
130-139 |
かつ/ |
80-89 |
Ⅰ度高血圧 |
140-159 |
かつ/ |
90-99 |
Ⅱ度高血圧 |
160-179 |
かつ/ |
100-109 |
Ⅲ度高血圧 |
≧180 |
かつ/ |
≧110 |
(孤立性)収縮期高血圧 |
≧140 |
かつ |
<90 |
※診察室血圧とは、医療機関で測定する血圧のことをいいます
※家庭血圧とは、家庭内で測定する血圧で、診察室血圧からそれぞれ5mmHgずつ低い値となっています
※家庭血圧の場合は135/85mmHgを超えたら高血圧と診断します2
高血圧の定義は140/90mmHg以上で、Ⅰ度高血圧以上に該当します。これは、140/90mmHg以上の血圧が、脳梗塞や心筋梗塞などの脳血管病死亡やそのほかの死因に影響を与える危険因子であるという、多くの研究報告に基づいた数値です1。
この数値よりやや低い、診察室血圧130~139/80~89mmHgの「高値血圧」の場合は、まずは生活習慣の修正を開始または強化する、とされています3。
Ⅰ度高血圧以上では、降圧薬が開始されることが多いです。
このため、健康診断などで一番注意が必要なのは「高値血圧」になります。
もともと運動習慣があり、塩分制限などの食事内容に配慮できる場合はご自身で取り組むのも一手です。しかし長期的な健康維持を念頭に置くと、この時点で医療機関を受診し、相談してみるのも良いでしょう。
◎低血圧の基準値と、症状が現れやすい数値は?
続いて、低血圧について説明します。
低血圧については、明確な数値はありません。しかし、診察室では血圧が100/60mmHg未満の場合に気持ち悪さ、めまいなどを訴える方が多い印象です。
また、アナフィラキシーショックなどのショック状態の場合、収縮期血圧90mmHg以下の目立った血圧の低下があると、交感神経系の緊張により、頻脈、顔面蒼白、冷汗などの症状がみられやすいです4。
これらはショック状態となる原因疾患の影響もありますが、単純に起立性低血圧や迷走神経反射などの血圧低下に伴う交感神経の緊張でも起こる現象です。
以上より、低血圧に関して明確な基準値はないものの、おおむね収縮期血圧が100mmHgを下回る場合は低血圧に伴う上記のような症状がみられやすいと考えても良いでしょう
■高血圧、低血圧の原因や、なりやすい人について
日本人の高血圧の約8~9割が、高血圧になる原因を一つに絞ることができない「本態性高血圧」であり、中年以降で、親が高血圧の場合に多くみられます。
遺伝的素因(体質)や食塩の過剰摂取、肥満などさまざまな要因が組み合わさって起こる2ため、これらに該当する方は注意が必要です。
低血圧については、「ショック」の状態で起こる場合を除いて、多くは脱水や自律神経障害などで起こります。自律神経障害は糖尿病の方に多くみられますが、体位性頻脈症候群(Postual Orthostatic Tachycardia Syndrome/POTS)などの可能性もあるので、低血圧で見られる症状が続く場合は医療機関に相談することをおすすめします。
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脳と血管は切り離せません。脳梗塞などの脳神経内科で診察する病気と高血圧は深い関係があり、高血圧の治療は当院でも手厚くフォローしています。
また、低血圧によるめまいの症状なのか、脳の病気によるめまいの症状なのかについても、なかなかご本人だけではわかりにくいものです。
高血圧や低血圧に伴う症状で心配な場合は、当院へご相談ください。一人ひとりに寄り添った診療で、健康診断での疑問や、日常生活での不安が少しでも解消するための解決策をご提案いたします。
<参考文献>
(1)日本高血圧学会発行.高血圧治療ガイドライン2019
(2)日本高血圧学会、日本高血圧協会、ささえあい医療人権センターCOML編集.一般向け「高血圧治療ガイド欄2019」解説冊子 高血圧の話
(3)日本医師会作成、日本老年医学会作成協力.超高齢社会におけるかかりつけ医のための適正処方の手引き 5.高血圧
(4)日本救急医学会 医学用語解説集 ショック