高コレステロール血症は肥満じゃなくても起こる!? 脂質異常症の対策について解説|Leo葵クリニック|名古屋市新栄の神経内科・内科

トピックス Topics

地下鉄「新栄町」駅から
徒歩30

高コレステロール血症は肥満じゃなくても起こる!? 脂質異常症の対策について解説


「体型には気をつけているのに、高コレステロールだといわれるなんて」と驚いた経験はありませんか?

また、「脂質異常症を少しでも改善したい」と感じている方も多いのではないでしょうか。

コレステロールに関する不安や疑問は、年齢を重ねるほどに身近なものになってきます。


今回は、脂質異常症の対策や治療法について、日常生活に役立つ情報を交えながらわかりやすくご紹介します。


■脂質異常症(高コレステロール血症など)とは


脂質異常症とは、血液中の脂質バランスが乱れた状態です。LDL(いわゆる悪玉)コレステロールや中性脂肪が高い、HDL(いわゆる善玉)コレステロールが低いといった異常が見られます。


過剰なカロリーや糖質、飽和脂肪酸の摂取によって引き起こされることが多い一方、遺伝的な体質や他の病気に伴って発症する場合もあります。


特に、遺伝が関係する家族性高コレステロール血症の場合は肥満ではなくても発症します。

国内で頻度の高い遺伝性疾患で、家族内発症もみられやすく、200人から500人に1人と高率に存在します1


自覚症状がほとんどないものの、そのままにしておくと動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳卒中など重篤な病気のリスクが高まってしまいます。


健康診断で数値に異常が見られたら、生活習慣を見直すとともに、内科(特に糖尿病内科、循環器内科、脳神経内科など)の受診を検討します。


あわせて、6月末に掲載した「脂質異常症の種類・原因・症状、そして相談する診療科」についてまとめたコラムも、ぜひご覧ください。


関連記事
太っていなくても脂質異常症? 脂質異常症の原因と症状について解説


■脂質異常症の予防と対策


まずは、脂質異常症にならないための予防を行うことが大切です。

主な対策の方法は、食事を見直すこと、運動習慣を取り入れることです。重要なポイントに絞って説明します。

脂質異常症の方も、脂質異常症を予防したい方も、これらの対策を行うとよいでしょう。


◎脂質異常症の食事療法

脂質異常症の対策において、日々の食事内容の見直しは土台となる大切な項目です。
まずは、飽和脂肪酸(脂身の多い肉やバターなど)やトランス脂肪酸(マーガリンや加工食品)を控え、代わりに魚や植物油に含まれる不飽和脂肪酸を意識して取り入れるようにしましょう。


飽和脂肪酸を不飽和脂肪酸に置き換えると、LDL(悪玉)コレステロールや総コレステロール/HDL(善玉)コレステロール比が低下することが報告されています2。すなわち、悪玉コレステロールが少なくなり、善玉コレステロールが増えることを意味しています。


トランス脂肪酸には炎症を促進する作用が報告されており、さらには血管内皮機能障害も引き起こすと考えられています。これらにより動脈硬化、急性冠症候群、突然死、インスリン抵抗性、脂質異常症、心不全といった疾患の発症に関与している可能性が示唆されています。


このため、トランス脂肪酸を避け、飽和脂肪酸から不飽和脂肪酸への切り替えを積極的に行いましょう。


また、コレステロール値の改善には、食物繊維が豊富な野菜・海藻・豆類なども効果的です。糖質の過剰摂取にも注意し、間食や甘い飲料を控える工夫もしましょう。

バランスのよい和食中心の食生活が、脂質バランスの改善につながります。


◎脂質異常症の運動療法

脂質異常症において、運動療法も重要な役割を果たします。


なかでも、有酸素運動とレジスタンス運動(いわゆる筋トレ)を合わせて行うことが、脂質異常症の改善につながると報告されています。


148件の臨床試験を統合した解析によると、週に3回、中〜高強度の運動を続けることで、LDLコレステロールが平均で7.22mg/dL低下することが示されました。


これは薬物療法に比べると小さな変化ですが、それでも心疾患のリスクを4〜5%下げる効果が期待できるとされています。薬と併用することで、最大30%近くのリスク低下につながる可能性もあると報告されています3


■脂質異常症の治療法


脂質異常症の治療は、主に食事療法と運動療法とあわせて薬物療法を選択します。食事療法と運動療法の大まかな内容についてはすでにご紹介したので、ここでは薬物療法について簡単にお話します。


◎高LDL血症の薬物療法

高LDL血症(悪玉コレステロールの値が基準値よりも高い状態)の薬物療法には、以下のようなものがあります。


  • スタチン(第一選択薬):コレステロールの合成を抑える内服薬

  • エゼチミブ:腸でのコレステロール吸収を抑える内服薬

  • レジン製剤:胆汁酸を排出しコレステロールを減らす内服薬

  • PCSK9阻害薬:LDLを強力に下げる注射薬

  • ベムペド酸:今後国内承認が期待される新しい内服薬


症状の重さや既往歴に応じて、これらを組み合わせて使うこともあります。


◎高TG血症の薬物療法

高TG血症(中性脂肪の値が基準値よりも高い状態)の薬物療法には、以下のようなものがあります。


  • フィブラート系薬剤:中性脂肪を減らす効果がある内服薬

  • オメガ-3 脂肪酸製剤:EPAなどが含まれる中性脂肪低下薬

  • SGLT2 阻害薬:糖尿病を合併している場合に使用される血糖降下薬だが、中性脂肪の改善にも一部効果が期待される


■まとめ


脂質異常症の治療・予防は、ご自身の体質や生活習慣に合った対策を選び、無理なく続けることが大切です。脂質異常症は気づかないうちに進行することもあるため、定期的なチェックと早めの対処が健康を守る第一歩となります。


家族性高コレステロール血症についてご心配のある方や、脂質異常症に関する具体的な対策方法についてお悩みがある方は、ぜひ当院へご相談ください。


<参考文献>

1, 増田大作. 循環器疾患予防のための脂質異常症治療の基本.日本循環器病予防学会誌.2021;56(1):31-46

2, Patty WST, et al.Saturated Fatty Acids and Risk of Coronary Heart Disease. Curr Atheroscler Rep. 2010 Aug 14;12(6):384–390.

3, Neil AS,et al.The Effect of Exercise Training on Blood Lipids: A Systematic Review and Meta-analysis.Sports Med.2025 Jan;55(1):67-78.


Leo葵クリニック
医師
⇒院長の経歴はこちら