健康診断で「コレステロールが高い」と言われたとき、「まずは、薬を使わずに食事を見直してみたい」と考える方は少なくありません。
最初に食事を見直すことは、脂質異常症の改善の一歩です。脂質異常症は日々の食生活を少し変えるだけで改善できる場合も少なくありません。また、薬の力を借りる場合であっても、食事の工夫を合わせることでよりよい数値の維持を期待することができます。
この記事では、コレステロール値を下げるための食事の工夫、具体的なおすすめメニュー、控えたい食品についてご紹介します。
■脂質異常症とは
脂質異常症には
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高LDLコレステロール血症(高LDL-C血症)
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低HDLコレステロール血症(低HDL-C血症)
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高トリグリセライド血症(高TG血症)
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高non-HDLコレステロール血症
などがあります。
LDLコレステロールは、上昇に伴い心筋梗塞などの冠動脈疾患の発症や死亡、アテローム血栓性脳梗塞の発症のリスクを上昇させます1。
また、高トリグリセライド血症は将来の冠動脈疾患や脳梗塞の発症や死亡を予測する、とも言われています1。
さらにほかの病態においても、脂質異常症をそのままにしておくと将来的に動脈硬化を進行させやすくなり、さまざまな病気のリスクとなってしまいます。
これまでのブログ記事に脂質異常症の原因や症状、対策について解説したものがあります。こちらも合わせてご覧ください。
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■脂質異常症の食事療法のポイント
脂質異常症では、LDLコレステロールを下げ、中性脂肪を増やさない食習慣が重要です。以下の7点が脂質異常症の方における動脈硬化を予防するためのポイントになります2。
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過食に注意し、適正な体重を維持する
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肉の脂身、動物脂、加工肉、鶏卵の大量摂取を控える
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魚の摂取を増やし、低脂肪乳製品を摂取する
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未精製穀類、緑黄色野菜を含めた野菜、海藻、大豆および大豆製品、ナッツ類の摂取量を増やす
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糖質含有量の少ない果物を適度に摂取し、果糖を含む加工食品の大量摂取を控える
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アルコールはできるだけ控える
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食塩の摂取は6g/日未満を目標にする
1・6・7は脂質異常症に関係なく動脈硬化の予防に共通している内容のため、2~5から脂質異常症の改善に必要なことを考えていきましょう。
■脂質異常症の改善におすすめのメニュー
青魚や脂が多い魚に多く含まれているエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)などのn-3系多価不飽和脂肪酸は、高トリグリセライド血症を改善し、冠動脈疾患発症の抑制につながります2。
また、飽和脂肪酸を摂りすぎないように、低脂肪の乳製品を選ぶとよいでしょう2。
さらに、緑黄色野菜や海藻、大豆・大豆製品から食物繊維を摂取することで、血中脂質の改善が期待できます2。野菜は1日に350g(両手で山盛り一杯)以上必要です2。
精製度が低い五分づき米や玄米などは、食物繊維をしっかり摂取できるだけでなく、ビタミンB1やマグネシウムなどの他の栄養素も摂取できるので、推奨されています2。
これらを総合すると、肉類を控え、米・大豆・魚・野菜・海藻・きのこ・果物などを取り合わせて食べる日本食パターン2がおすすめです。さらに、朝食などに低脂肪牛乳などを追加するとよいかもしれません。
■脂質異常症にNGな食品
卵類、肉類、魚肉の内臓などはコレステロールを多く含むため、これらの過剰摂取は避けましょう2。
また、飽和脂肪酸はLDL-Cを増加させるため3、これらを多く含む肉や乳製品の脂質もNGです。
具体的には乳製品のクリームやバター、ラード、ココナッツオイル、ショートニングなどに多く含まれるので、菓子類の食べ過ぎは避けるようにしましょう2。
さらに、トランス脂肪酸はLDL-Cを増加させ、HDL-Cを減少させるため4、これらを含むマーガリンやショートニングを使用した食材は避けるようにしましょう2。
■まとめ
脂質異常症は食事や運動である程度の改善が見込めます。特に、食事の見直しは毎日の小さな工夫から始めることができます。
脂質異常症そのものは目立った症状がないため、健康診断で指摘されてもそのままにしてしまう方も少なくありません。
心筋梗塞や脳梗塞を発症してようやく脂質異常症のリスクについて知ることになる、といった事態を回避するためにも、日々の生活から健康でいられるためのエッセンスを取り入れてみませんか?
脂質異常症でお悩みの方はぜひ、当院へご相談ください。一人ひとりに寄り添った、オーダーメイドの治療や生活スタイルの提案をいたします。
<参考文献>
1, 日本動脈硬化学会.動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版.
2, 厚生労働省.健康日本アクション支援システム~健康づくりサポートネット~ 脂質異常症の食事.
3, 石川俊次,他. 食事飽和脂肪酸・コレステロールと動脈硬化-最近の考え方.オレオサイエンス.2012;12(3):99-105.
4, 丸山武紀.トランス脂肪酸と健康.オレオサイエンス.2013;13(6):259-66.