糖尿病の合併症に要注意! 目や足の異変は初期症状かも?|Leo葵クリニック|名古屋市新栄の神経内科・内科

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糖尿病の合併症に要注意! 目や足の異変は初期症状かも?


最近、目のかすみや、足のしびれを感じていませんか?以前より疲れやすいと感じる方もいるかもしれません。このような身体の小さな変化を、年齢のせいと考えて済ませてしまうこともあるでしょう。


しかし、もしかするとこれらの症状は、糖尿病による合併症の初期サインかもしれません。


糖尿病は、慢性的な高血糖の影響でのどが渇いたり排尿の回数が増えたりするだけでなく、長い時間をかけて全身の血管に負担をかけます。


その影響は視力や腎臓の働き、足の健康にまで及びます。合併症は自覚しにくく、多くの場合気づかないうちに進行してしまいます。このため、初期症状のうちに対処しておくことが大切です。


以前、ブログ内で糖尿病の初期症状や原因について解説しました。あわせて参考にしてみてください。

(参考記事:『意外と知らない糖尿病 初期症状や原因について解説』)


今回は万が一に備えて、糖尿病の特徴的な合併症について知っておきましょう。


■糖尿病の危険な3大合併症


糖尿病では高血糖状態によって産生された、終末糖化産物(AGEs)やフリーラジカルによる酸化ストレスによって、動脈硬化が進行する場合があります1。細い血管が多い手足の末梢や目、腎臓を中心に血管の動脈硬化が進行し、神経障害や網膜症、腎不全につながります。


糖尿病の3大合併症といわれる糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症は、そのままにしておくと視力や足、腎臓といった生活に欠かせない機能を大きく損なう恐れがあります。


◎糖尿病性神経障害で足の切断のリスクに

糖尿病性神経障害では、手足のしびれ感や感覚の低下が生じます。足先がピリピリとしたしびれ感や、温度の違いを感じにくい感覚鈍麻が特徴です。感覚が鈍ると小さな傷に気づかず、感染や潰瘍が進んでしまうことがあります。


さらに糖尿病では、感染を起こしやすく、さらに感染した部位が治りにくいという特徴や、末梢の血管の動脈硬化による血管の閉塞も起こりやすくなります2


このような背景により、重症化によって足の切断が必要になる場合もあります。糖尿病がある方で、足の感覚異常がある場合はフットケアの相談を検討しましょう。


◎糖尿病性網膜症で失明のリスクに

糖尿病性網膜症は、目の網膜の細かい血管が障害されることで起こります。初期には目立った自覚症状はなく、多くの場合、検査を受けなければ気づきません。進行すると視力が低下し、視野がかすむようになります。さらに悪化すれば失明に至る危険もあります3


糖尿病と診断された人は、眼のかすみなどの症状がなくても、定期的に眼科を受診し、早い段階で変化を確認することが大切です。


◎糖尿病性腎症で透析が必要な状態に

糖尿病性腎症は、腎臓の働きが徐々に低下した結果、老廃物をろ過する力が弱まって身体に有害な物質が溜まってしまう病態です。初期の自覚症状は目立たないものの、尿や血液の検査で判断することが可能です4


進行するとむくみや倦怠感が現れ、最終的には腎不全に至り、人工透析が必要になる場合もあります。人工透析は、多くの場合週3回透析設備のある医療機関へ通院する必要があります。

通院そのものの負担や、透析そのものによる身体への負担もあり、生活スタイルを大きく変えざるを得なくなります5


糖尿病と診断された場合は、血液検査や尿検査でこれらのリスクの評価をおすすめします。


■他に気を付けておきたい糖尿病の合併症


糖尿病の影響は目や腎臓、神経にとどまりません。 血管に関連する疾患や感染症を起こしやすくなります。

動脈硬化の進行で、心臓では心筋梗塞や狭心症が、脳では脳梗塞などの脳血管障害が起こりやすくなります。


糖尿病のある方では、心筋梗塞や狭心症などの冠動脈疾患、脳血管障害に代表される大血管障害の発症頻度が糖尿ではない方の2~4倍程度高いことが知られています6。高血圧や脂質異常症のある方は、これらのリスクがさらに高まります。


また糖尿病があると、感染症にかかるリスクが1.5~4倍高いといわれています7。免疫の機序が複数障害されるため、感染症にかかった場合に治りにくくなってしまいます7。感染が重症化した場合、敗血症などの危険な状態に陥る危険性もあります。


これらは、命に危険がおよぶリスクが高いため、糖尿病の管理はとても大切です。また、糖尿病の方で胸痛や傷の治り具合が明らかに悪いなどの兆候がある場合は医療機関への相談を検討しましょう。


ブログ内に治療薬から生活改善までの全体像を紹介した記事があります。糖尿病管理にご参照ください。

(参考記事:『糖尿病を治療しないとどうなる? 治療薬から生活改善までの全体像を紹介』)


■まとめ


糖尿病はそのままにしておいたり、管理が不十分だったりすると、合併症が進行してしまう可能性があります。


健康な日常生活を維持するためにも、気になることがあれば早めに医療機関への相談をおすすめします。当院は、日本糖尿病協会登録医を含め、スタッフ一同がみなさまの不安や疑問に丁寧にお応えします。お気軽にご相談ください。


<参考文献>

1, 野間玄督,他:糖尿病性大血管症の診断と評価法.心臓.2010;42(6):706-12.

2, 鈴木英司,他:糖尿病における,フットケアと栄養管理.日本フットケア学会雑誌.2017;15(3):139-41.

3, Unnati V, et al: Diabetic Retinopathy. Stat Pearls (最終閲覧日:2025年9月2日)

4, 愼野博史,他:糖尿病性腎症の診断と治療.日内会誌.2001;90:350-8.

5, 中村菜々子,他:内科診療所での糖尿病腎症患者に対する行動医学チーム医療に臨床心理士を加える試み.行動医学研究.2015;21(1):31-8.

6, 石垣康: 糖尿病における脂質異常症管理.日内会誌.2023;112:181-7.

7, Richard IG Holt, et al: Diabetes and infection: review of the epidemiology, mechanisms and principles of treatment.Diabetologia.2024;67(7):1168–80.


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