
気温が上がり、春の訪れが近いことを感じるのと同時に、辛い目のかゆみやくしゃみといった花粉症に悩んでいませんか?
全国的な調査によると、花粉症の有病率は1998年が19.6%、2008年が29.8%、2019年には42.5%で、約20年で2倍以上になっています1。
いまや多くの人が悩まされている花粉症ですが、花粉症そのものは他の疾患に影響を与えるのでしょうか?今回は、身近な病気の1つである糖尿病との関連について紐解いてみましょう。
■花粉症と糖尿病の直接的な関係はわかっていない
花粉症と糖尿病の関係は注目されており、さまざまな研究が報告されています。
花粉症は、身体の免疫が花粉に過剰に反応することで起こります。このとき体内では「アレルギー反応に関わる抗体(IgE)」が増えることが知られています。
このIgEの血中濃度が高い場合に、糖尿病の前段階の割合が高かったという報告や2、更年期前の女性を対象にとした研究では、肥満やインスリン抵抗性が高い人ほど総IgE値が高い傾向があったという報告もあります3。
これだけを見ると花粉症と糖尿病の発症は関係あるかもしれないと思うかもしれません。
一方で、生活習慣が身体に及ぼす影響が少ない傾向がある思春期の若者に対象を絞った研究では、血中の総IgE値とIRには明らかな関連性は確認できませんでした。
しかし、一部のアレルゲン特異的IgE(例えばエビアレルギーのIgE)値とインスリン抵抗性の関連性は否定できない結果も述べられていました4。
このような研究結果を踏まえても、花粉症の免疫の仕組みと糖尿病の発症リスクが、直接的に結びついているかどうかは現時点では明らかではありません。
花粉症も糖尿病も炎症が関係する疾患であることから、両者がつながっているのではないかと考えられることもあります。しかし、それぞれの炎症の仕組みや背景は異なるため、単純に結びつけることはできません。
花粉症と糖尿病の関係は、引き続き研究報告の結果が待たれている分野です。
■花粉症の治療の中に、血糖値と関係するものがある
花粉症治療は、抗ヒスタミン薬が中心です。これらは、花粉症の一連のメカニズムの最終段階である、くしゃみや鼻水を引き起こすヒスタミンへのアプローチを行うものです。作用の強さや持続時間、眠気の副作用の出やすさなどを考慮し、症状にあわせて薬を使い分けます。
花粉症の程度が中等症、重症の場合はこれらの治療薬以外にステロイドの内服や注射などの炎症を抑える方法や、舌下免疫療法、抗体薬などの根本治療に近い治療法を選択することもあります。
このなかで、ステロイドの内服、長時間作用型のステロイド注射を使用する場合に、ステロイドの副作用で血糖値が上がってしまう可能性があります。
また、血糖値の上昇以外にも月経不順、体重増加、不眠や多毛などの副作用が起きてしまう可能性もあります。このため、花粉症治療で全身性ステロイドを使用する場合は、作用と副作用のバランスを考えた慎重な判断が必要です。
特に、糖尿病やその他の疾患が背景にある場合は、事前に主治医に相談することをおすすめします。また、スポーツの競技によってはドーピングの懸念もあるため、使用を検討する場合には必ずその旨も伝えるようにしましょう。
■まとめ
花粉症と血糖値の直接的な関係は明らかではありませんが、治療の内容次第では血糖値を上げてしまうこともあります。
春は、花粉症の当事者にとって、天気や気温、症状の程度に悩まされる辛い時期でもあります。花粉症の症状でお悩みの場合は、当院にお気軽にご相談ください。みなさま一人ひとりの症状や生活スタイルに合わせて、対処法をご提案いたします。
<参考文献>
2, Honglei W et al: The association between immunoglobulin concentrations and prediabetes prevalence in a large Chinese cohort.Metabolism.2017;73:77-84.
3, Seung EL et al: Insulin Resistance Increases Serum Immunoglobulin E Sensitization in Premenopausal Women.2020;45(2):175-82.
4, Yaping L et al: Association of serum total IgE and allergen-specific IgE with insulin resistance in adolescents: an analysis of the NHANES database.BMC Pediatrics.2024;24(332):1-12.
