最近ずっと頭痛がある気がする。そういえば鼻づまりも続いている。そんな心当たりはありませんか？
緑内障持ちの親が、頭痛がすると言っている。緑内障で頭痛があると失明する、と聞いたことがある。病院へ行かせた方が良いか、迷っていたりしませんか？
今回は、身近に潜む「頭痛でわかる病気」についてお話します。
1)副鼻腔炎（蓄膿症）と頭痛
ひどい鼻づまりが続いて、副鼻腔炎(蓄膿症)になったことはありませんか？
副鼻腔とは頬、目、額の付近にある骨の複数の空洞の総称で、いずれも鼻腔と繋がっています。慢性的に膿が溜まっている慢性副鼻腔炎の人も一定数いますが、頭痛を伴いやすいのは急性副鼻腔炎で、その多くはウイルス感染などをきっかけに細菌感染に移行して起こります。
急性副鼻腔炎は「急性に発症し、発症から4週間以内の鼻副鼻腔の感染症で、鼻閉、鼻漏・後鼻漏、咳嗽といった呼吸器症状を呈し、頭痛・頬部痛、顔面圧迫感などを伴う疾患」と 定義(1)されています。また、発症から４週間以内のもの(2)を指します。
もっと簡単に言うと、急性副鼻腔炎は「長引いて悪化した鼻かぜで、頭や顔の痛みを伴うもの」と言えます。
感染による炎症が、三叉神経という顔面の感覚を支配する神経に及ぶことで、痛みが生じます。痛みの生じる部位は、炎症が起きている副鼻腔の部位に一致し、額やこめかみや頬、場合によっては歯肉が痛むこともあります。
これらは、痛みの強さや鼻汁の程度で下記の表のとおり軽症～重症に分けられます。
表1 急性副鼻腔炎のスコアリングと重症度分類(2)より引用
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症状・所見 |
なし |
軽度/少量 |
中等度 |
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臨床症状 |
鼻漏 |
0 |
1 (時々鼻をかむ) |
2 (頻繁に鼻をかむ) |
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不機嫌・湿性咳嗽 (小児) |
0 |
1 (せきがある) |
2 (睡眠が妨げられる) |
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顔面/前頭部痛 ・圧迫感(成人) |
1 (がまんできる) |
2 (鎮痛剤が必要) |
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鼻腔所見 |
鼻汁・後鼻漏 |
0 (漿液性) |
2 (粘膿性少量) |
4 (中等度以上) |
軽症：1～3点、中等症：4～6点、重症：7～8点
(鼻漏：鼻水とほぼ同義、湿性咳嗽：痰が絡んだせき、後鼻漏：のどの奥に流れ込むひどい鼻水、漿液性：さらさらとした、粘膿性：黄色に近く粘り気のある)
軽症例に限っては小児・成人ともに抗菌薬は投与せず、自然経過を観察することが推奨(2)されています。一方で、中等症以上においては抗菌薬を使用します。
表1の鼻腔所見は医療機関でなければわかりません。しかし、鼻漏や痛みの強さなどの自分で判断できる項目で、中等症以上の状態であれば早めに医療機関を受診しましょう。
また、「慢性副鼻腔炎」でこれらの症状がみられる場合は、副鼻腔の周辺の組織にまで炎症が広がっている可能性があります。画像検査やより複雑な治療法の検討をする必要があるので、早めに医療機関を受診しましょう。
2)緑内障と頭痛
緑内障は、中途失明の原因疾患の第一位の疾患です(3)。高い眼圧により視神経が圧迫されることで生じると考えられています。正常な眼圧でも生じるケースも多く、原因は諸説あり、最近は特定の遺伝子の機能異常により、網膜の神経細胞が障害されて生じる可能性(4)なども考えられています。
緑内障は、40歳以上の日本人の20人に1人が罹患していると言われています。ただ、そのほとんどが自覚症状の乏しい、緩やかな経過の緑内障です。
このため通常の緑内障は、頭痛を伴った場合でも危ないものではありません。
頭痛を伴う緑内障は、「急性閉塞隅角緑内障」です。眼球に栄養を届ける「眼房水」という液体の排泄口が閉塞してしまい、その結果眼圧が短時間に急激に上昇することで起こります。
今まで経験したことのないような目の痛みに加えて、嘔気を伴う頭痛、視力低下、目のかすみなどの症状が急激に現れます。
緑内障発作に伴う頭痛は、すぐに治療しなければ失明してしまうため、このような症状があった場合はすぐに救急車を呼びましょう。
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急性副鼻腔炎や急性緑内障発作など、原因が脳にとどまらない頭痛について説明しました。
「頭痛でわかる病気もある」と知っておくと、いざというときにすぐに対処できるので、安心して過ごすことができますね。
＜参考文献＞
(1)山中 昇. 診療ガイドライン at a glance急性鼻副鼻腔炎 診療ガイドライン(2013年追補版). 日内会誌 2016;105:2403-2408
(2)日本鼻科学会: 急性鼻副鼻腔炎診療ガイドライン. 日鼻誌 2010;49:143-247
(3)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン改訂委員会．緑内障診療ガイドライン(第5版)
(4)Youichi Shinozaki et al. Astrocytic dysfunction induced by ABCA1 deficiency causes optic neuropathy. Sci Adv. 2022 Nov 4;8(44):eabq1081.
