風邪をひいたとき以外にも、子どもが頭痛を訴えることがある、そのような経験をされた保護者の方も多いのではないでしょうか。
本当に片頭痛なのか、気を引きたいだけなのか…今回は見極めが難しい、子どもの片頭痛について解説します。
1) 実は多い、子どもの片頭痛
片頭痛は大人に多い印象を持っている方もいるのではないでしょうか。しかし、意外に子どもの片頭痛の頻度は高いです。統計上では小学生で3.5%、中学生で4.8~5.0%、高校生で15.6%と言われています。(1)
日常生活で子どもに頭痛の訴えがあった場合は、片頭痛を考えてもよいでしょう。
2) 子どもの片頭痛でよくある症状とは
子どもの片頭痛の特徴的な症状について、大人の片頭痛と異なる点も合わせてご紹介します。
<片頭痛の特徴>
・頭痛発作の持続時間が4~72時間程度
・頭痛の特徴は片側性、ズキンズキンとするような拍動性、中等度~重度の頭痛、歩行や階段昇降などの日常動作で頭痛が悪化するなどの症状で、これらが少なくとも2つ以上みられる
・頭痛発作の際に嘔気があったり、光や音に過敏になったりする
これらの特徴が大人とともにみられやすい症状ですが、特に子どもの片頭痛においては、片側ではなく両側にみられやすく、通常前頭側頭部に発生すると言われています。片側性の頭痛は思春期の終わりから成人期の初めに現れることが多いです。
また、小児における後頭部痛はまれであり、片頭痛以外の場合は危険な頭痛の可能性があるので、必ず医療機関に相談するようにしましょう。
3) 片頭痛は遺伝する?
片頭痛は家庭内発症例が多いと言われています。片頭痛に遺伝要因があることはほぼ確実であり、複数の遺伝子と複数の環境要因が関与している多因子遺伝病である(1)と言われています。推定42%程度が関係しているという報告(1)もあります。
しかし、特定の遺伝子が解明されているのは、片麻痺性片頭痛という特殊な片頭痛のみです。片麻痺性片頭痛とは、片頭痛の前兆や片頭痛発作に伴って、一時的に左右いずれかの麻痺が生じるものです。片痺性片頭痛のうち、第一度近親者(両親やきょうだいなど自分の遺伝子の1/2を持っている血縁者)や第二度近親者(祖父母や叔父叔母など片親の異なる血縁者)の少なくとも1人が運動麻痺を含む片頭痛前兆を有する場合には、家族性片麻痺性片頭痛(familial hemiplegic migraine:FHM)に分類され、その場合にはCACNA1A、ATP1A2、SCN1Aなどの遺伝子変異が報告されています。(2)
このように、一般的な片頭痛については具体的な遺伝子や環境要因、およびその発生機序は不明ですが、ご両親に片頭痛の方がいる場合には、お子さんも片頭痛持ちになりやすいと考えて良いでしょう。
4) 片頭痛の対処の方法について
子どもの片頭痛では、発作時に一部の抗炎症薬(いわゆる鎮痛解熱薬)が有効とされています。具体的にはイブプロフェン、アセトアミノフェンが挙げられます。これらは一般のドラッグストアなどでも同じ成分を含むものを購入することはできますが、市販薬は他の成分と合わせた合剤であることが多いため、販売店舗の薬剤師に相談するか、医療機関での処方を受けるようにしましょう。
これらの内服が効かなかったときに、大人と同様にトリプタン系の薬剤の処方を検討することもあります。
また、子どもの片頭痛の予防薬については確立したものはないので、慢性的な片頭痛がある場合には非薬物療法から取り組むと良いでしょう。
非薬物療法には
・片頭痛誘因の回避、自己管理などの患者教育
・心理療法
・栄養補助食品
などがあります。
具体的には、良好な睡眠衛生、適切な食生活、食品添加物を含まない食事などの基本的な生活管理を行うことが挙げられています。他にも、ストレス管理、コーヒーなどの危険因子の回避、首と肩の筋肉のリラクゼーションの指導や、ビタミンB2を含む栄養補助食品などを選択すると良いようです。
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意外と起こる頻度の高い、子どもの片頭痛について説明しました。
子どもの片頭痛は大人以上に周囲の環境を整えたりなどの注意すべきことが多く、お子さんとご両親などの周囲の大人の協力が必要です。
症状についてのご相談や検査のご希望などがございましたら、頭痛や脳の専門家である神経内科専門医、当院にぜひご相談ください。
<参考文献>
(1)日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会 監修.頭痛の診療ガイドライン2021
(2)岩波 那音ら.孤立性片麻痺性片頭痛の1例.東女医大誌2018;88(2):57-62