こめかみがズキズキする、後頭部が重だるい、目の奥が痛い。
人によって、頭痛が起こりやすい部位はさまざまです。また、頭痛の部位で頭痛の原因をある程度絞ることができます。
今回は頭痛の部位ごとの、主な頭痛の概要について解説します。
1) こめかみ~側頭部の頭痛
☑片頭痛
頭の片側にズキズキとする頭痛みられることが特徴です。国内での年間の有病率は8%と推定され(1)、比較的に女性にみられやすい頭痛です。
<症状の特徴>
- 中等度(日常生活がつらい)ないし、重度(日常生活ができない)の頭痛発作
- 頭痛発作は4~72時間程度持続する
- 頭痛に加えて下記の症状が少なくとも1つ以上、頭痛発作と共にみられる
◎消化器症状として悪心または嘔吐
◎視覚神経系の症状として光過敏(通常の光がまぶしい,照明を暗くしたい)
◎聴覚神経系の症状として音過敏(通常の音がうるさい, 静かな環境を求める)
◎前庭神経系(平衡感覚関連の神経)の症状として運動過敏 (日常的な動作を避ける,動けなくなる)
片頭痛は近年、頭痛発作時の治療も、発作が多い場合の予防療法も、治療の選択肢が増えている分野です。日常生活に支障をきたす頭痛の場合は、早めに医師に相談しましょう。
☑顎関節症や咀嚼筋の痛みなど
顎関節症や咀嚼筋の痛みなどが、その周囲にある三叉神経という神経の一部へ放散痛や関連痛をきたすことがあります。
また、片頭痛や緊張型頭痛などの頭痛患者に顎関節症症状が有意に多かったという調査(2)もあり、痛みの存在は双方に影響を与える可能性があります。
2)前額部(おでこ)の頭痛
☑群発頭痛
前額部から眼の周囲にかけての激しい痛みが特徴です。群発頭痛は1000人に1人程度、特に男性に多くみられます。
<症状の特徴>
- 重度(日常生活ができない)~きわめて重度の頭痛発作
- 頭痛発作が15分~18分間持続する
- 頭痛に加えて下記の症状が少なくと も1つ以上、頭痛発作とともにみられる
◎眼の充血や流涙
◎鼻水や鼻づまり
◎前額部を含む顔面の発汗や紅潮
◎耳詰まり◎縮瞳(黒目が小さくなる)、瞼が下がる
- 頭痛に合わせて落ち着きがなくなる
- 頭痛発作がある場合に1回/2日から8回/日である
群発頭痛はとてもつらい頭痛ですが、発作時の治療や予防薬もあります。症状がある場合は医療機関を受診しましょう。
3)頭頂部(頭のてっぺん)の頭痛
☑大後頭神経痛
発作性の突くような痛み、感覚鈍麻または異常感覚が特徴です(3)。
大後頭神経を含む後頭神経群は頭皮の大部分を支配する感覚神経です。これらが頭蓋表層にある、首を支える筋肉などにより圧迫を受けることで上記のような痛みや感覚異常が起こることもあります。
首の筋肉に過剰な負担がかかるような姿勢をとり続けることは控えた方が良いでしょう。
通常の痛み止めや頭痛薬は効きません。痛みが日常生活に支障を及ぼす場合は、医師に相談しましょう。
4) 後頭部の頭痛
☑小後頭神経痛
症状は大後頭神経痛と同じで、小後頭神経はより後頭部に近い部位にあるため、後頭部に痛みの症状が生じます。
その他の内容は大後頭神経痛と同等です。
☑緊張型頭痛
後頭部から頭全体に波及する、締め付けられるような頭痛を特徴としています。
国内における頭痛の中では最多で、年間有病率は22.4%です。
<症状の特徴>
- 片頭痛などよりは軽度の頭痛発作(軽度~中等度)
- 片頭痛にみられるような随伴症状がある場合でも光過敏か音過敏の一方に限られる。
- 頭痛の頻度は月1日以下で鎮痛薬が奏功する
- 両側性で圧迫感や締め付け感あり
- 歩行や階段昇降のような日常的な動作により悪化しない
- 悪心や嘔気はない
また、触診による頭蓋周囲の圧痛の増強は重要な異常所見で、非発作時にもみられます。この圧痛は、頭痛の強さと頻度とともに増強し、実際の頭痛の発現中にさらに悪化します(4)。
頭皮を押すことで痛みが増すようであれば緊張型頭痛を疑っても良いかもしれません。
緊張型頭痛では、予防療法や筋緊張を和らげる自己管理なども大切になります。無理な我慢はせずに医師に相談するのも一手です。
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部位別の頭痛の原因について説明しました。
薬局などで手軽に購入できる頭痛薬だけでは、どうすることもできない頭痛もあります。予防療法も含めて、頭痛の専門である脳神経内科の当クリニックへご相談ください。
<参考文献>
(1)Hisanori Kowa , et al:Clinical corse and natural history in migraine. Clin Neurol 2011; 51 1147-1149
(2)Yasuhide Makiyama. Basics of common headache disorders: Implications for temporomandibular disorder practice.J.Jpn.Soc.TMJ Clin Neurol 2014;54:387-394
(3)Satoru Shimizu. Scalp neuralgia and headache elicited by cranial superficial anatomical causes: supraorbital neuralgia,occipital neuralgia, and post-craniotomy headache.
(4)永関 慶重, 永関 一裕:緊張型頭痛の疫学と肩こり頭痛の成因分類 日本頭痛学会会誌50:94-98,2023