新生活や新学期の準備で忙しいときに限って、いつもの頭痛がひどくなりませんか?
春は生活リズムが大きく変わったり、気候の変化が大きかったりなどの日常生活を取り囲む様々な要因に変化が訪れます。
今回は、春にみられやすい頭痛の原因やその対策について解説します。
■春にみられやすい頭痛の原因
春にみられやすい頭痛についての原因について2つご紹介します。
◎気象の変化や日照時間の延長
悪天候で気圧が下がると、もともと片頭痛のある場合に片頭痛発作の訴えが強くなるというお話は聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
天候そのものが片頭痛発作の誘発因子であるという科学的根拠はありません。しかし、一部の片頭痛の方において、気温が低く湿度が高いなどの気象の変化と片頭痛発作の発生との間に関連があった(1)という報告はあります。
この点、三寒四温といわれる春は、気温が低く湿度が高い条件を満たしやすく、片頭痛を起こしやすい時期ともいえます。
また、春は冬に比べると日照時間が増えます。季節による頭痛発作の変動について、白夜と極夜を有するノルウェーの病院で行われた調査では、約3割の片頭痛患者に季節性変動がみられました。
そのうち、発作のない時期に光過敏がみられる割合が高く、太陽光や明るい光が片頭痛発作の誘因となるケースが多かった(2)と報告されています。
この点、冬よりも日差しが強くなり始める春は、片頭痛が起きやすい時期ともいえます。
◎環境の変化などによるストレス
春になると、慣れない場所での新生活のスタートや、職場の人の入れ替わりなどもあります。
このような生活の変化にストレスを感じてしまう方も少なくありません。
ストレスそのものについては明確な単位や基準がないため、ストレスと頭痛に関して科学的な根拠を証明することは難しいです。
しかし、多くの片頭痛患者を検討した調査では、片頭痛の発症に何らかの誘因があるという方のうち、最も多い誘因がストレスで約8割の方に影響を与える因子である(3)という報告もあり、ストレスが頭痛発作の誘因となっている可能性はあります。
また、慣れない環境で緊張をすると身をこわばらせることもあります。長時間におよぶと首や肩の筋肉の緊張によって緊張型頭痛が起きてしまうこともあるでしょう。
■春にみられやすい頭痛の対策
上記の通り、春にみられやすい頭痛は、季節に伴う自然環境や社会的環境の変化を誘因にするものが多く挙げられます。
これらの頭痛を防ぐためにも、発作の誘因となるものは控えた方が良いでしょう。温度や光によるものであれば、服装や帽子、サングラスなどを用いることが片頭痛発作の予防につながります。
また、すべての原因を避けることは現実的には困難です。原因を避けることよりも、原因への対処を学ぶ行動マネージメントの方が適している場合もあります。
特にストレスが頭痛発作の誘発となっている場合は、頭痛ダイアリーなどをつけることは自分自身を知り、行動の工夫につなげることができます。
このような対策を行っても、日常生活に支障のある頭痛が続く場合は、片頭痛予防薬の内服(一部の抗てんかん薬や降圧薬)や注射(エムガルディなど)を検討することで、長時間頭痛に悩まされている方も改善につながる可能性があります。
————————-
春にみられやすい頭痛とその対策について説明しました。
春は、だんだんと温かくなり、日差しがまぶしくなり、新緑が美しい芽生えの季節です。その一方で、環境の変化も大きい時期でもありますが、一人でも多くの方にとって心も温まり健やかに過ごせる季節となるように願っています。
h5頭痛でお困りの方は、お気軽にご相談ください。
<参考文献>
(1)Jan Hoffmann, et al . Weather sensitivity in migraineurs. J Neurol 2011 Apr;258(4):196-602
(2)Bekkelund SI et al. Photophobia and Seasonal Vacation of Migraine in a Subarctic Population. Headache 2017 ;57(8):1206-1216
(3)Kelman L. The triggers or precipitants of the acute migraine attack.Cephalalgia 2007;27(5):394-402